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 初めて来た町の物産館で、珍しい名前の野菜を見つけた。店の人に尋ねる。
「これ、きょうり、って書いてます?きゅうりではなく?」
 店の人は笑顔で頷く。
「ええ、まさしく『きょうり』です。見た目はきゅうりとよく似ていますが、食べ方としては、煮物が一番、おすすめですね」
「煮物ですか。この時期に」
 今は夏じゃないか。煮物もいいだろうが、できれば冷たく、きゅうりの漬物のように食べたい。パリッと、ポリッと。
「読めますよ、あなたの心。まあ、騙されたと思って、どうです?おひとつ」
 そう言って渡されたのは、爪楊枝に刺さった湯気立つきょうりの煮物。暑がりの私は嫌々それを受け取り、一口食べてみた。驚いた。何だか懐かしい、温かい味がしたから。
 店の人は言う。
「わかりました?わかったら、意固地になっていないできょうりーーふるさとにお帰りなさい。家族が心配しているよ」
公開:23/06/17 11:25

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