梅の降る街

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今でははない、いつか、どこかに。
天に届く巨大な梅の木がある街がありました。

てっぺんは雲の中にあり、地上から見えるのは太い幹と、枝の一部だけ。

大樹は春先に花をつけ、夏になる前に実をつけます。
春と夏の間は雨の季節。
強い雨に打たれて、大樹の実は地上へと落下します。
甘い香りのする、ほんのり赤と黄色が混じった、緑色の美しい実です。

街の人々は実を拾い集め、さまざまな特産品を作ります。
ジャム、砂糖漬け、果実酒にキャンディ。

ある年も雨期がやってきて、ひとびとは実が降る日を待っていました。
けれど珍しく、台風がやってきたのです。
強い風は実を、遙か遠くまで吹き飛ばしてしまいました。

異国で、木の実の雨が降りました。
それはその国で、「梅」と呼ばれる木の実でした。

以来その国では、春と夏の間を「梅雨」と呼ぶようになったとか。
ファンタジー
公開:23/06/14 14:53

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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