スタンドに、飛び込む隠れ家

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その球場には、隠れ家がある。

江ノ島の海岸近くにある小さな球場には、トンビが多く生息していた。
彼らはどこからともなく現れ、消えていく。

スタンドではビールや焼きそばなどが販売されている。
トンビたちは、観客の持つ食べ物を狙っていた。

賢い彼らにとって、応援に熱中している人間から食べ物を奪うなど朝飯前。
さらにホームランの時には、人間はそちらに釘付けになり、食べ物を奪いやすいと気づいたのだ。

そこで彼らは、ホームランを作ることにした。
ぎりぎりスタンドに届かなそうなボールには、トンビが一斉に飛んできて、羽根で風を起こす。
風に乗ったボールは、スタンドに運ばれ、ホームランになった。
時にはボールに体当たりして、スタンドに押し込んだりもした。

ひと仕事終えた後に飛び込むのはスタンドの最上部、スコアボードの裏側。
ホームランの隙に奪った食べ物が山積みされた、彼らの隠れ家だ。
ファンタジー
公開:23/06/06 07:18
#研究室ライブ

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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