仮面武装会

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 かつて仮面舞踏会というものは、賑やかで華やかな社交の場だった。けれども時が経ち、人も変わる。世間も空気も変わる。一時期の殺気は収まりつつあるが、世はいまだウイルスと闘っていた。舞踏とはつまり、人と人が密着して踊ることを意味する。ウイルスの脅威は当然、この場にも渦巻いていた。
「寄るな!触るな!二メートル離れろ!」
 衣装も顔もお綺麗なご婦人が叫べば、
「なんだ、その態度は!寄るな触るなは、こっちのセリフ。私の許可なく、娘に接近しおって!」
 男の傍には、ビスケットを食んでいる小さな娘。男一人で育てているため、仕方なく連れてきたのだが。
「一人で寂しそうにしていたからよ!だいたいなによ!あんな小さな子、こんな空気の汚いところに連れてきて!」
「うっ、それは……!」
ーーどうやらこの勝負、婦人に分があったようである。
 しかしこの仮面武装会、顔が見えないからと言いたい放題、汚い世界だ。
公開:23/06/08 08:43

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