金は時なり

近未来。貧富の差をなくすため、各国は協力して統一通貨を生み出した。
それは「時間」だ。

出生時に渡され、額は全人類共通。
持っている範囲内で、自由に受け渡しできる。

働けば、労働時間に生み出した価値がかけ算され支払われる。
受け渡しは双方の合意が必要で、奪い取ることはできない。

貧富の差は無くなるはずだった。

しかし、状況は悪化の一方だった。
何もしない者は時間を浪費し、動く者は時間を使って時間を作り出す。
その速度は、貨幣の時よりも早かった。

程なくして、世界は時を通貨とすることをやめ、貨幣に戻した。
数百年おきに、時と貨幣の交代が繰り返された。

──それから数千年。

文明の崩壊した地球では、ゆったりとした時間が流れていた。
わずかに残された人類は、助け合いながらその日を精一杯生きた。

お金とは、時間とは、何だったのか。
答える者はもういない。問いかける者も、また。