おひとついかがですか?
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商店街。夕方、暗くなってきたアーケードの下、少女の明るい顔が横を過ぎて行く。向かったのは、路上で誰かと話している女性の元。声が聞こえる。
「はいっ、お母さん!母の日!いつもありがとう!」
手にしていたのは、一本のカーネーション。そうか、今日は母の日か。
無意識にお腹に手が伸びる。つい数時間前まで、ここにも子供がいた。でもその子は今、私の目の前にはいない。涙が溢れる。「ごめんねっ……ごめんっ……!」
泣き崩れる私。ふと、誰かに声をかけられる。
「おひとついかがですか?」
「え……?」
目を上げると、視界いっぱいにカーネーションが。その向こうで笑っているのは夫だった。
「こんなものかな?ーーね?お母さん」
受け取った花束は、まだこの手に記憶のある友人の赤ちゃんほどの重さ。生まれていたら、私たちの子も……。
夫の気遣いに、私はまた、泣き崩れたのだった。
「はいっ、お母さん!母の日!いつもありがとう!」
手にしていたのは、一本のカーネーション。そうか、今日は母の日か。
無意識にお腹に手が伸びる。つい数時間前まで、ここにも子供がいた。でもその子は今、私の目の前にはいない。涙が溢れる。「ごめんねっ……ごめんっ……!」
泣き崩れる私。ふと、誰かに声をかけられる。
「おひとついかがですか?」
「え……?」
目を上げると、視界いっぱいにカーネーションが。その向こうで笑っているのは夫だった。
「こんなものかな?ーーね?お母さん」
受け取った花束は、まだこの手に記憶のある友人の赤ちゃんほどの重さ。生まれていたら、私たちの子も……。
夫の気遣いに、私はまた、泣き崩れたのだった。
公開:23/05/15 04:07
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