跳ねる布団

　寒がりのお前におすすめしたい布団がある。そう友人に言われて見てみたのは、見たところ普通の羽毛布団だった。
「これのどこを勧めいんだよ？」
　尋ねると、友人はこう言った。
「まあまあ、使ってみれば、わかるって」
　おすすめポイントも聞かずに買えるか！そう思ったが、こいつは口がうまいんだ。なんやかやと結局買わされてしまった。
　さてその布団を使って次の日の朝だ。俺はありえない寒さで目を覚ました。そして驚いた。なんと、布団が部屋中を飛び跳ねている。羽虫のようにぴょんぴょんと。
「まてっ、こらっ、おいっ……！」
　布団を追いかけていたら、すっかり目は覚め、暑くもなってきた。友人に電話をする。と、
「おお、成功したか」
　友人は言う。
「おまえの母ちゃん、嘆いてたぞ。おまえがいつまでたってもぐうたら寒がりだって」
「……」
　そうだったのか。
　恥ずかしくなった俺を、初夏の日差しが照らしていた。