質量の会話

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ある日、言葉に質量が生まれた。
言葉を音として発した瞬間、それは目に見える文字となって現れる。

穏やかな気持ちで発せられた言葉は、そよ風のように舞っていく。
強い意志で発せられた言葉は、岩のような塊となって飛んでいく。

世界は一変した。

文字通り、言葉の暴力が吹き荒れた。

人々は話すことを恐れた。沈黙は金というわけだ。
すると、会話の減った世界でさらに強い言葉を使うものが現れた。雄弁は銀だ。

私は、彼らと戦うすべを身につけ、護身術として教えている。

それは──聞き専だ。
聞くことに徹すれば、相手の言葉は穏やかになっていく。
会話はキャッチボールだ。受け取れる言葉を受け止め、相手に返せばいい。
返した言葉は、相手の心の中に消えるのだから。

もちろん、受け止められないボールは避ければいい。

ただ、問題が一つ。
誰にも受け取られなかった言葉が、スクラップのように積み上がっていた。
ファンタジー
公開:23/04/25 11:09

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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