夢の冷蔵庫

3
2

俺の冷蔵庫には夢が詰まっている。正確には、夢の中で食べたものが。 
 俺は十八歳。社会人および一人暮らし一年生だ。ゆえに家事も一年生なわけで、しばらくまともな食事にありついていなかった。そんな時、不意に備わったのがこの力だ。
 夢の中で食べたものを現実に呼び出す力。
 はたしてそれが俺の力によるものなのか、そんなことはどうでもいい。とにかく俺は夢と現実をうまくコントロールして、好きなものを好きなだけ食う生活をした。
 あるときは大根の味噌汁。大好物だ。あるときは筑前煮。これも大好物。もちろん、ハンバーガーやコンビニ飯なんかも、じゃんじゃん呼び出した。実家ではあまり、食べさせてもらえなかったから。
「いっそのこと、母ちゃん呼び出せないかな」
あるとき思った。呼び出せた。母ちゃんは不思議がっていたけど、料理を作ってくれた。
 が。
 俺の夢のジャンクフード生活は、やはり終わった。
公開:23/04/10 10:58

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容