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春の温もりが眠気を誘い、私は大きくあくびをする。
駅ビルの時計が19時をさしたのを見て、歩き出した。
神田駅の南口、雑居ビルの立ち並ぶあたりを進む。
歴史ある古民家に混じって、巨大なビルの姿も見える。
過去と未来が入りまじる街の景色は、嫌いではない。
程なくして、私はなじみの店──蕎麦屋「梅月庵」に来た。
「おや、今日も来てくれたのか」
オヤジさんの声に、笑顔で頷く。
店の中は、木の匂いと、ダシの香りがたゆとうている。
「あんたが最後の客だ。うんとサービスするよ」
どんぶりに入った食事が置かれた。
無言でそれを食べていると、オヤジさんが前に座った。
言葉は無いけれど、暖かい、最後の時間が流れる。
帰りがけ、のれんをしまうオヤジさんを見上げた。
「来月からは、駅前のビルに移転するんだ」
私は最後のお礼と挨拶に、にゃあ、と鳴いたのだった。
駅ビルの時計が19時をさしたのを見て、歩き出した。
神田駅の南口、雑居ビルの立ち並ぶあたりを進む。
歴史ある古民家に混じって、巨大なビルの姿も見える。
過去と未来が入りまじる街の景色は、嫌いではない。
程なくして、私はなじみの店──蕎麦屋「梅月庵」に来た。
「おや、今日も来てくれたのか」
オヤジさんの声に、笑顔で頷く。
店の中は、木の匂いと、ダシの香りがたゆとうている。
「あんたが最後の客だ。うんとサービスするよ」
どんぶりに入った食事が置かれた。
無言でそれを食べていると、オヤジさんが前に座った。
言葉は無いけれど、暖かい、最後の時間が流れる。
帰りがけ、のれんをしまうオヤジさんを見上げた。
「来月からは、駅前のビルに移転するんだ」
私は最後のお礼と挨拶に、にゃあ、と鳴いたのだった。
ファンタジー
公開:23/04/04 10:06
南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。
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