恥といく

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情けを道連れに、旅してきた道を歩いていると、掻き捨てた恥が箱の中で小さくなっていた。

――恥よ、どうしてここにいるのだい?

すると、
犯した失敗が75日たっても消えぬまま、千里を駆け抜け巡り巡って相見えるかもしれぬと知り、穴の代わりに箱に入っているのです。
と……

――やれやれ、お前らしくもない。
猿だって木から落ちる。
弘法さまも筆を誤る。
さあ、そこから出ておいで。

だけども恥は箱の奥へと後ずさり、口に手をあて肩を狭める。
その様は、井戸の中に住む蛙と瓜二つ。

――恥よ、可愛い子ぶるではない。
空の青さを知るだけで満足だというのかい?
迷惑をかけるからと、足がすくんでしまうかい。

取り返しがつかない失敗は、先人から学び、それを避けて進めばいい。
失敗は成功の元。
笑って、笑われて、
誰かの手を借りて、誰かに貸して、
共にまいろう、人生を。
――恥もまた可愛い子。
その他
公開:23/03/31 11:59

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


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note @yokomare

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