明日への切符

0
3

疲れきった身体を引きずり、私は街をさまよっていた。
時の流れが遅い。未来が、明日さえも、絶望的に遙か遠く感じられる。

気づくと、ハデなシャツの男が近づいてきて、こう言った。
「この切符をあげよう。貴方が望む場所に連れていってくれるよ。」

言葉を返すことすら面倒で、ひったくるように切符を受け取った。

やがて街の灯りが消えた。
行き場のない私は、郊外へ向かう。

海風の吹く、夜の公園にやってきた。
一面の静寂。闇に溶けて消えてしまいそうだった。いや、そうしたかった。
ベンチに寝転がっていたら、いつの間にか眠りに落ちていた。

どれくらいの時間が過ぎたのか。
頬を撫でる風と、陽光のくすぐったさに目を覚ました。

頭をかきながら身体を起こすと、ポケットから何かが落ちた。
切符だった。
朝露に濡れて光るそれに、文字が浮かび上がっていた。

「世界で一番近くて、一番遠い場所へ、ようこそ!」
公開:23/03/31 10:39

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容