エンノキ
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引っ越しのご挨拶なら、これを持って行きなさい。そう言って祖母が渡してくれたのは、白くて長い、エノキのようなキノコだった。「のような」としたのは、エノキにしては太かったから。これではまるでエリンギだ。
「エリンギでもないよ。それは『エンノキ』という」
「エンノキ?なにそれ、聞いたことない」
「エンノキはね、太く長いお付き合いをしたい方に渡すと、それが叶うという、ありがたいキノコなんだよ」
そう聞いて、僕は少し、情けなくなった。僕のコミュ症、ばあちゃんにもバレてる。
引きこもりだった僕も、4月から晴れて新社会人。住み慣れた家を出て行く。初めての一人暮らし。初めての……ことだらけ。
「これでおまえも、ひとりじゃないよ」
優しく言うばあちゃんの目は温かい。ーーでもね、と思う。
でもね、ばあちゃん。これさ、
まずは近所の人に渡しに行くという難関があるよね……。
「エリンギでもないよ。それは『エンノキ』という」
「エンノキ?なにそれ、聞いたことない」
「エンノキはね、太く長いお付き合いをしたい方に渡すと、それが叶うという、ありがたいキノコなんだよ」
そう聞いて、僕は少し、情けなくなった。僕のコミュ症、ばあちゃんにもバレてる。
引きこもりだった僕も、4月から晴れて新社会人。住み慣れた家を出て行く。初めての一人暮らし。初めての……ことだらけ。
「これでおまえも、ひとりじゃないよ」
優しく言うばあちゃんの目は温かい。ーーでもね、と思う。
でもね、ばあちゃん。これさ、
まずは近所の人に渡しに行くという難関があるよね……。
公開:23/03/25 07:14
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