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夜も更け、静寂に包まれるその場所で、
「今日も疲れた~」
「肩がゴリゴリする」
「脚が棒のようだ」
その部屋にいる者らが次々と腰を降ろし寛ぐ。やがて、
「修学旅行といえば、あれだな?」
「うん、あれだな」
その者らは、個々が手にするそれを投げ合う。
はじめは口パクで、だが熱が帯びるにつれて声が漏れ、大きくなり、部屋のあちこちへ、手にしていたそれが散らばっていく。
……と、
「静かに」
入口で、物思いに耽ていた者が告げる。
「見廻りがくる」
「やばっ」
部屋中に散ったそれらを掻き集め、手渡しながら、奥の方から定位置に戻っていく。
「急げ、急げ!」
拾いあげたそれらを、個々の元へと手渡ししていく。
やがて、灯りが部屋に入ってくる。
「おやっ?」
キラリ、光がはね返える。
しまった、まだ残っていた?
「修学旅行生の落とし物かな?」
守衛は仏具を拾いあげ、冷や汗かく仏像を横目に、御堂奥へと進む。
その他
公開:23/03/22 13:23

大西洋子( 滋賀 )

ショートショート、童話中心に活動しています。

ショートショートガーデン空想競技2020入賞


Twitter @yoko_egaku
note @yokomare

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