乾燥ハーモニカ

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小雨の降る公園を、私は歩いていた。

ハーモニカの音が聞こえ、辺りを見回す。
人だかりがあり、近づいて、人垣の間からのぞくと、黒の燕尾服に帽子を被った男性がハーモニカを演奏していた。
知らない曲だったが、その音に聞き入っていた。
最後の曲が終わった時、示し合わせたかのように空には虹があがった。雨は止んでいた。

お客が解散したのを見計らって、奏者に話しかけてみた。
奏者の男は優雅に一礼し、ハーモニカを見せてくれた。
それは乾燥ハーモニカといい、奏でると、周囲の水気を取り払うという。
雨が止んだのは、この効果だそうだ。

すばらしかったと私がいうと、男は額に汗を流し、苦笑しながら答えた。

「私、雨男なんですよ。その上、汗を多くかく体質でして。
 辺りがパリッと乾いても、私だけは汗だく。
 あと、演奏が終わると、ハーモニカの効果が切れるので……」

その言葉と同時に、また、小雨が降り始めた。
ファンタジー
公開:22/09/21 09:43

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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