彼と彼女と

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どこまでも続く海に向かって、私はため息を吐く。
私は思い出していたのだ。数日前、彼と交わした言葉を。
彼は私に聞いた。「タイムマシンで行くなら、過去?それとも未来?」
私は答えた。未来!と。もちろん未来!と。
「だって、もう勉強やだもん!」
私がそう言うと、彼は笑った。笑って、言った。「僕は、ここがいいかな」
「あ、ずるい!」
「ずるい?」
「だってそうじゃない!人には未来か過去か聞いておいて、自分は選択肢にないもの選ぶなんて!」
「ははは、そうだね」
 でもね、と彼は言った。それきり、黙った。それきり黙った彼は、今ここにはいない。
知らなかったんだ、私。彼が、浦島太郎の末裔であることを。
知らなかったんだ。どんなにやり直しを試みても、玉手箱を開けてお爺さんになると言う、浦島の運命を変えられないことを。

ねえ、君は今、どこで何をしている?
公開:22/08/27 10:47

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