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「どうだ?あるであろう、脈がふたつ。私のとーーのう?」
 后が問うと、侍医はさささ、と数歩下がり、床に頭を擦り付けるようにして謝罪の言葉を述べた。述べた上で、「私を殺してください!」と言った。
 后は首を左右に振った。あなたを殺して、何になるかと。
「いずれにせよ、私の身分は剥奪されるでしょう。幸い、これで見放す親ではありません。帰る場所はあります」
「お后様!」
「今までありがとう、侍医。私の罪があなたの首を絞めぬよう、うまく取り計いますからね。安心なさい」
「お后様……!」


 数ヶ月前から、后は子を宿していた。腹にではなく、背後に。
公開:22/08/20 18:25
更新:22/08/20 18:30

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