儀式-Another Story
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兄貴の彼女が死んだ。昔から霊感のあった俺は棺桶の横に佇んでいる彼女を見ないように目を伏せていた。
だか火葬の後、彼女がそっと建物を出ていくと、どうしても気になりこっそり彼女を追いかけた。
彼女がたどり着いたのは海だった。風が吹いていたが彼女の髪は一切揺れず静止画のようだった。
気づけば俺は彼女に話しかけていた。
「いやぁ、焼けましたね」
「ええ」
会話が成立したことに驚きながらも話を続ける。
「どうしてここに?」
「…初デート場所だったんです」
「…そうなんですね」
風は砂を巻き上げながら遠くの風車を回した。一瞬、彼女と死んだ母親の姿が重なった気がした。
「私、そろそろいきますね」
「…兄貴は大丈夫だ」
俺は彼女にも、俺自身にも言い聞かせるようにそう叫んだ。
突風が吹いた。あまりの風の強さに目をぎゅっと閉じる。
風が収まりそっと目を開けると、もう彼女はいなくなっていた。
だか火葬の後、彼女がそっと建物を出ていくと、どうしても気になりこっそり彼女を追いかけた。
彼女がたどり着いたのは海だった。風が吹いていたが彼女の髪は一切揺れず静止画のようだった。
気づけば俺は彼女に話しかけていた。
「いやぁ、焼けましたね」
「ええ」
会話が成立したことに驚きながらも話を続ける。
「どうしてここに?」
「…初デート場所だったんです」
「…そうなんですね」
風は砂を巻き上げながら遠くの風車を回した。一瞬、彼女と死んだ母親の姿が重なった気がした。
「私、そろそろいきますね」
「…兄貴は大丈夫だ」
俺は彼女にも、俺自身にも言い聞かせるようにそう叫んだ。
突風が吹いた。あまりの風の強さに目をぎゅっと閉じる。
風が収まりそっと目を開けると、もう彼女はいなくなっていた。
その他
公開:22/08/20 17:57
コメントはあまりしませんが皆様の作品をいつも楽しく拝見しております!
叙述トリックものが大好物
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