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ある所にたいそう貧乏な男が住んでおった。男は真面目で、仕事をしないものではなかったが、なにせ不器用だった。不器用だから職人肌ではないし、気が優し過ぎ、人から金を取らないから、商売にも向いていなかった。
 そんな男のぼろ家に1匹の大きな蜘蛛が現れた。見たこともない大きさだ。
男が蜘蛛を認めると、蜘蛛が言った。
「私の吐く糸で、着物を作りなさい。それを村で売るのです。」
男は目を白黒させ、蜘蛛が糸を吐くのを見ていた。蜘蛛の糸の着物など、売れるわけがないと思いながら。
さきに言ったが、男は不器用だった。だがその男でも、蜘蛛の糸はするする縫えた。滑らかな、良い糸だったのだ。
それを村で売ると、飛ぶように売れた。金は取らない姿勢でいたが、皆払ってくれた。おかげで男は、金持ちになった。嫁も取った。
今現在、蜘蛛は「蜘蛛殿」と呼ばれ、神棚に祀っているという。
公開:22/08/21 08:17

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