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「また壊れたよ。不良品だな、これは」
 捨ててしまえと、言われた。不良品だから、捨ててしまえと。
 おれは、不良品じゃない。上質な製品として、お前の家にやってきたんだ。おれを不良品にしたのはお前、そう、大事に扱わなかったなかったお前じゃないか!
 その時だった。おれは、別の人間の手に渡った。それは、この家の息子だった。町一番の不良として有名らしい。そいつがおれを見下ろして言った。「親父、この時計、もらっていいか?」
「あ?もらうって、もう動かないぞーーま、お前には似合いだな、不良と不良品ってな。ハハハハッ!」
 黙れ、タコ!
 おれは酔っ払い親父の赤い顔に言った。だけど息子、どうして……?
「こういうのは、丁寧に使えば、長くもつんだよ。よし、一丁やるか!」
 言うと不良は、やさしい手つきで、おれを直してくれた。不良はボソリと「人も同じ」と言ったが、はたして親父に届いたかどうか。
公開:22/08/12 07:08

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