盲肢

2
1

「寿命を伸ばす方法がやっと分かった」
「本当ですか、博士」
「ああ、現代の死因の殆どは血管に出来た癌だろう。昔は血栓と言ったらしい。昔は細胞変異症のことを癌と言ったらしいが。昔の血栓は薬では癌を溶かすスピードが追いつかない。だか、癌を最小限に抑えることのできる器官を見つけた」
「なんなのですか」
「盲肢だ」
「…あの盲肢ですか?」
「ああ、詳しくは資料に書いてある。私は癌も大きくなってもう手遅れだ。あとはお前が研究を頼む」

博士が研究所をあとにした後部下は研究資料を見つめた。

盲肢[旧]足: 昔は盲肢で“歩く”という行為で移動していた。盲肢は血流の促進の補佐をし“第2の心臓”と呼ばれていた。

「現代の移動は専用の機械だ。盲肢なんてぶらぶらさせているだけで何の役にも立たないと出生と同時に切除する。そんなものを今更研究しろなんてどうかしている」

部下は資料をゴミ箱に投げ捨てた。
SF
公開:22/08/13 00:58

Thelema

コメントはあまりしませんが皆様の作品をいつも楽しく拝見しております!
叙述トリックものが大好物

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容