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急な腹痛で病院に行った。が、緊急処置はされず、当然のように「あちらでお待ちください」と言われた。付き添いの家族も、もちろん俺自身も少しイラッとしたが、そもそも急患は救急車で来る人のことを言うようで、妻の車で来た俺は致し方なかった。だがーー。
「いてえ……」
なんなんだ?この尋常じゃない痛みは。なにしてんだ?医者はよぉ。
俺は心の中で悪態をつく。妻はおろおろしているが、なんとか診察を早めようとしてくれている。と、その時だった。
「急患です!あの人、奥さんの車で来たあの人!急病人です!」
甲高い、ちょっと耳に、いや腹にくる声がした。すると皆の注目が俺に集まり、あれよあれよと俺の処置が施された。命拾いしたわけだ。
「あの声はいったい……」
再び待合室に戻った俺が見渡すと、部屋の隅で九官鳥が俺に向かってウィンクをした。
公開:22/12/19 18:44

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