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また、魔熊が現れた。人は、一目散に逃げた。村は空っぽ、魔熊はポツン。
「友達になりたいだけなのに……」
 魔熊は知らない。魔熊と人間は、逆立ちしたって友達にはなれないことを。
 魔熊は泣いた。泣いて泣いて、涙に暮れた。それを見たある人が言った。
「温泉だ、温泉が出たぞー!」
 それを聞いて、人々は戻ってきた。みな次々に、魔熊の涙に、体を浸していった。魔熊は首を傾げる。
「今なら、友達になれるかな?」
 けれど、魔熊は怖かった。話しかけて、また逃げられたらどうしよう。
 そのとき、魔熊は何かを見つけた。青い色の、薄っぺらなもの。小さくて、穴が空いてて、二つに裂けている。魔熊はそれを拾い上げる。こんなもの、見たことがない。きっと、人間のものだ。人間の忘れ物だ。魔熊はニヤリと笑う。
「そうだ、これを届けてあげれば……」
 魔熊の『友達100人作戦』が始まるーー。
公開:22/11/10 08:18
マグマ 童謡『森のくまさん』

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