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 ネットで頼んだ本が届いた。どこからのお届けだったのか、頼んでから随分と日があった。箱を開けるのも、包みを解くのにも、気が急く。
 だが、楽しみにしていた本は、なかなか私の目の前に現れない。紙が多かったからだ。本についての説明文や、本ができるまでの過程を書いた紙、この本を、いや、作った本全てを、この作り手がどれだけ愛しているかを書いた紙、そんなものでいっぱいだった。
 その本は、再生紙でできていた。
 その本は、何度も何度も読まれていた。
 その本は、泣く泣く手放されていた。

 私は、本の紙の質など考えない。
 私は、一度読んだら、それで終わる。
 私は、ほいほい手放してしまう。

 はたして私に、この本を読む資格は、あるだろうか。この本を持っている資格は、あるのだろうか。

「いや、ない」

 私は楽しみにしていた本を返品した。君を愛してくれる人のところへおかえりーーそう言いながら。
公開:22/11/08 06:56
ちょっと実話 私は返品していません

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