おでんわお待ちしております
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会社からの帰り、ちょっと飲んでいくかと店を探すと、赤ちょうちんに赤のれんの屋台を見つけた。思わず笑みが溢れる。が、なにかおかしい。のれんには、文字が書かれていない。代わりに、絵文字が書かれていた。電話のマーク、しかも、スマホとかガラケーとかではなく、懐かしの黒電話だ。
とりあえずのれんを潜ってみると、そこには黒電話と割烹着姿の男が一人いるばかり。食い物は何もない。「あの、ここって……」
たずねたとき、突然、目の前の黒電話が「ジリリッ」と鳴り出した。驚いて男を見る。「早く取ってやって」ずいぶんぶっきらぼうに言われる。「うるさいから早く」
おそるおそる受話器を取ると、声が聞こえた。それもたくさん。
「お客さん何にするっ?ねえ、変わり種いかない?変わり種!」
「大根もだししみしみだぜ!」
「卵もおいしいわ!」
どうやらここは、食材自らが客におすすめをくれるおでん屋のようだった。
とりあえずのれんを潜ってみると、そこには黒電話と割烹着姿の男が一人いるばかり。食い物は何もない。「あの、ここって……」
たずねたとき、突然、目の前の黒電話が「ジリリッ」と鳴り出した。驚いて男を見る。「早く取ってやって」ずいぶんぶっきらぼうに言われる。「うるさいから早く」
おそるおそる受話器を取ると、声が聞こえた。それもたくさん。
「お客さん何にするっ?ねえ、変わり種いかない?変わり種!」
「大根もだししみしみだぜ!」
「卵もおいしいわ!」
どうやらここは、食材自らが客におすすめをくれるおでん屋のようだった。
公開:22/10/29 18:44
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