悲観花
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秋の始まり、この時期になると、軽くうつ病になる。
私は彼岸花。お彼岸の頃に田んぼの脇なんかに咲き乱れる花。葉が一枚もなくて、きっちり彼岸の時期だけ咲くから、幽霊花などとも呼ばれる。
「幽霊花、名前が嫌いだな……」
私は呟く。そう。うつ病の原因はこの名前。子供たちが私を摘み、その花びらの艶やかさから「シャンデリア」と例えてくれる一方で、幽霊花と呼ぶ大人たち。
「こんなにはっきり出てくる幽霊もいないって」
ため息をついたとき、となりに誰かが座った。その人は言った。「あなたも幽霊がお嫌い?」
悲しい声だった。私はしまった、と思い、取り繕うように言った。
「あなたの出番も終わりですね。寒くなります。風邪を引いてしまう前に、お帰りになっては?」
「あら、紳士ね」
女の幽霊が、優美に微笑んだーー。
私は彼岸花。お彼岸の頃に田んぼの脇なんかに咲き乱れる花。葉が一枚もなくて、きっちり彼岸の時期だけ咲くから、幽霊花などとも呼ばれる。
「幽霊花、名前が嫌いだな……」
私は呟く。そう。うつ病の原因はこの名前。子供たちが私を摘み、その花びらの艶やかさから「シャンデリア」と例えてくれる一方で、幽霊花と呼ぶ大人たち。
「こんなにはっきり出てくる幽霊もいないって」
ため息をついたとき、となりに誰かが座った。その人は言った。「あなたも幽霊がお嫌い?」
悲しい声だった。私はしまった、と思い、取り繕うように言った。
「あなたの出番も終わりですね。寒くなります。風邪を引いてしまう前に、お帰りになっては?」
「あら、紳士ね」
女の幽霊が、優美に微笑んだーー。
公開:22/09/25 03:12
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