気力振替機

大型連休が終わり、憂鬱な気分で会社に向かっていると、スマホにメールが届いた。
ATMからの自動送信で、振替完了と書かれていた。
とたんに、全身に力が満ちあふれてくる。

連休前に、気力を振り替えておいたのだった。

このサービスが始まったのは二年前。
気力が余っているときに振り替えると、その日は気力が尽きて終わる。
その代わり、振り替え先の日はやる気いっぱいになる、という仕組みだ。
日は、後から決めることもできる。やる気の貯金のようなものだ。

休み明けの仕事をこなし、無事に一日を終えた私は帰宅した。
まだ、気力は残っているのに気づき、ATMに余剰を振り込んでおく。
こまめに貯めている気力は、一千万を超えていた。
数年は気力いっぱいで過ごせる換算だ。

まあ、それを使うあてもほとんど無いのだけれど。
でも無駄にはならない。
他の誰かに気力を振り返ることもできるからだ。