あめんぼ　ももいろ　さくらいろ

桜吹雪が吹いた川で、誰かが泳いでおりました。
あめんぼです。あめんぼは、自力で泳いでいるつもりで、じつはちょっと、桜の花筏に乗って春を満喫しておりました。
「桜、いいにおいだな」
あめんぼは顔を上げて、胸いっぱいにその香りを楽しみます。
ホー……ホケッ、キョウ。
春の初めのウグイスさんは、まだあまり上手に鳴けないようです。
「鳴かぬなら　それもまたよし　ウグイスさんーーってね」
あめんぼさん、どんどん風流な気持ちになっていきます。
「花筏　泳げぬぼくの　ビート板ーー切ないね」
あめんぼはひとり、クスッと笑います。

土手の上では、もうすぐ新一年生でしょうか。買ってもらったばかりのランドセルを背負って、男の子が笑っています。