「あそび」が消えた世界

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近未来。
全てが自動化・合理化され、世界から無駄が消えた。
結果、人々は「無駄」を、嗜好品としてたしなむようになった。

満員電車に乗って、その中で思い思いの一時間を過ごす施設。
社内の全職位の印鑑を、書類に押してもらう時間を競うラリー。
無駄は、アミューズメントとして世界に残り続けていた。

ある日、古い遺跡から物理メディアが発見された。
光ディスク、CD、そして本。
すでに存在しない、無駄そのものだった。

特に「本」は、燃えやすく、水に弱く、劣化しやすい。
その上、書かれていたことの多くは、誰かが想像した絵空事だった。
無駄の塊のようなそれに、人々は夢中になった。
特に「物語」と呼ばれる、空想のできごとを記した本は人気を集めた。

多くの人が、本を作ろうと試みた。
しかしいまだ、成功した者はいない。
無駄をすべて捨て去った人類には、もう、本を作る力は残されていないのだった。
ファンタジー
公開:22/03/16 09:03
更新:22/03/16 09:05

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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