時、交わる森

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梅雨明けの週末、私は一人、車を走らせていた。
目指すは、子どものころに住んでいた街だ。

高速を降り、下道を走っていると、見覚えのある公園が目に入った。
駐車場に車を停め、歩いてみる。
昔通った商店が、変わらぬ姿で残っているのを見つけた。
弁当を買うと公園に戻り、木陰のベンチに腰を下ろす。
変わらない景色。私自身は三十歳ほど年をとったが。

と、半ズボンの少年が駆けてきた。
「公園の出口ってどっちですか!?」
何かあったのだろうか。私は話を聞きながら、公園の出口まで案内した。
何度もお礼を言う少年は、公園の門をくぐった瞬間に、消えた。

まばたきをして、少年の行ったほうを見る。
誰も、いない。

帰り道、ふと思い出した。
子どものころ、公園の奥にある森に迷い込み、出られなくなったことがあった。
ベンチに座っているおじさんに勇気を出して声をかけ、帰れたのだ。

そうか、あれは──。
ファンタジー
公開:22/06/29 09:31

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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