記憶書き出し装置

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中古の記憶を探しに、秋葉原のジャンク屋に来ていた。

人間の記憶をコピーできる装置が発売されて数年。
瞬く間に普及し、他人の旅の記憶や、憧れの人との会話を楽しんだ。
記憶を売る業者も繁盛した。

指先ほどのディスクを額に当てると、記憶がコピーされる。
切り出した記憶をカプセルに書き込み、それを飲むと再生される。
五感すべてに再生されるため、その場にいるようにリアルだ。

乱雑に積まれたディスクをあさっていると、何も書かれていないものを見つけた。
こういうのがジャンクの楽しみだ。
買って帰り、ディスクの中身をカプセルに移し、飲み込んだ。

再生されたのは、二十代前半くらいの男性が語っているものだった。
結婚したこと、もうすぐ生まれてくる子どものことを幸せな顔で語っている。
子につける名前を口にしたとき、私は気付いた。

それは、私が生まれる前になくなったという、父の若き日の姿だということに。
ファンタジー
公開:22/06/15 10:29

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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