残像と共に去りぬ

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二十一世紀後半。
世界は、残像で満ちていた。

3Dスキャナで人や動物の行動を記録し、専用のプリンタで再生させる。
すると、記録した行動を繰り返すコピーが生み出される。いわば人間の残像だ。
ほどなくして単調な命令なら後から覚えられるようになり、世界のあらゆる場所で活躍するようになった。

それから数十年たったある日。残像を統括するコンピュータが不具合を起こし、停止した。
店からは店員が消え、会社からは社員が消えた。
地上に残ったのは、わずかに数百人の人間だった。

残像が残像と共に生き、喜び、悲しんだ世界。
果たして世界はいつから、人間よりも残像の方が多くなっていたのか。
今となっては、知るよしもない。

人の消えた、かつては賑やかだった大通りを見下ろし、わたしは思う。
わたしが家族と、仲間と生きた半生の思い出は、残像ではなかったと信じたい、と──。
ファンタジー
公開:22/06/08 09:26

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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