コーヒーの木

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昔々、大樹が一本生えておりました。
それはコーヒーの木。季節になると赤い実を付け、動物たちの食糧となりました。

時は流れ、木の周りは、ビルが建ち並ぶ大都会となりました。
ビル建築のため、木は伐採されることとなったのです。
巨大な電動ノコギリが木の幹に当てられた、そのとき。

幹から、コーヒーが噴き出しました。同時に、あたりは香ばしい匂いが満ちたのです。
長きにわたり生き続けたコーヒーの木は、その身体もコーヒーでいっぱいでした。

幹から溢れたコーヒーは池を作りました。
それを目的に人が集まるようになり、それを相手にお菓子や雑貨、それから本を売る店が次々と開店したのです。

それから百年ほどが過ぎ。
木は寿命を迎え、コーヒーの池も干上がってしまいました。
あとには、喫茶店と書店だけが残ったのです。

喫茶店と書店が集まる街は、もしかしたら、コーヒーの木の生えていたところかもしれません。
ファンタジー
公開:22/05/25 09:51

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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