さかさま文具店 #02 ソウルインク

2
2

 一人旅で、寂れた温泉街にやってきた。
 宿に着き、部屋に通されて一息つく。
 お茶でも飲むか、とテーブルを見たら、急須と一緒に透明な瓶が置かれていた。

 和紙の説明書きが添えられており、人の思い、記憶、人生や夢を抽出し、インクにしますと書かれている。
 瓶の蓋に手を当て、「夢」という言葉を胸に蓋を開けた。

 水音が聞こえた。瓶の中に液体が溜まり始めている!
 液体は瓶の口まで溜まり、静かに止まった。
 瓶には、真っ白なインクが満たされていた。
 
 白では紙に書けない。私には夢などない、ということか。
 ふてくされ、床に大の字になったところで、ふと気づいた。
 インクが白なら、紙の方を黒にすればいいじゃないか。
 今いる場所で書けないのなら、場所の方を変えれば、書いた文字は、夢は、見えるのかもしれない。
 それに気づき、私は瓶を見つめた。
 今回の旅の、一番の収穫かもしれなかった。
ファンタジー
公開:22/05/18 09:25

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容