考えるベッド

寝不足気味の私を心配して、妻がベッドを買い替えてくれた。なんでもこのベッドは、横になっている人の体調を見て起こしたり、起こさなかったりするそうだ。
「それじゃあ、出掛けなけりゃいけない時とか、どうするんだよ？」
「滅多に外に出ないじゃない、あなた」
そうだ。私は作家だ。たまに煮詰まった時外に出るけれど、それも滅多にないのだ。さすが妻、よく見ている。
さて、それから数時間、午前0時を回ってやっとベッドに入った私は、朝を楽しみにしていた。そしてーー
「どうする？ねえ、どうする？」
ん？
「ちょっと待て、今考えて、ていうか、たまには自分で考えろよ！」
誰だ？誰が喋っている？私の頭の後ろで……ハッ！
起き上がり、ベッドを見る。何かが聞こえる。
「ねえ、どうするのさ！」
「だからぁ！」
起こすタイミングを考えてくれるベッドは、起こすタイミングを決められないベッドだった。