鏡団子
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松吉の家は農家でした。ですが、それはそれは貧乏な農家でした。おかげで毎日毎食、食うや食わずの生活を送っていました。
ある日のことです。いつものように豪農の家の坊にいじめられたあと、松吉はあるものを作り始めました。
「それはなんじゃ?」
誰かに問いかけられました。ですが松吉は作り物に夢中で、顔を上げずに答えました。
「泥団子です」
「泥団子?」
「はい。うちは、今年も鏡餅を用意できそうにありません。なのでせめてこうしてーーできた!ほら!」
松吉が振り返ると、それは見事な泥団子ができていました。
「泥団子も、磨けば輝くんですよ」
磨かれて輝くそれはまさしく鏡のようでした。
話しかけた人は思いました。松吉、待つのじゃ、と。さすれば来年こそはーーお前は「待つ吉」じゃろう?
翌年、松吉の家は、豊作も豊作、大豊作でした。あの時話しかけたのは実は五穀豊穣の神様、恵比寿様だったのです。
ある日のことです。いつものように豪農の家の坊にいじめられたあと、松吉はあるものを作り始めました。
「それはなんじゃ?」
誰かに問いかけられました。ですが松吉は作り物に夢中で、顔を上げずに答えました。
「泥団子です」
「泥団子?」
「はい。うちは、今年も鏡餅を用意できそうにありません。なのでせめてこうしてーーできた!ほら!」
松吉が振り返ると、それは見事な泥団子ができていました。
「泥団子も、磨けば輝くんですよ」
磨かれて輝くそれはまさしく鏡のようでした。
話しかけた人は思いました。松吉、待つのじゃ、と。さすれば来年こそはーーお前は「待つ吉」じゃろう?
翌年、松吉の家は、豊作も豊作、大豊作でした。あの時話しかけたのは実は五穀豊穣の神様、恵比寿様だったのです。
公開:21/12/31 11:10
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