歳末助け合い

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師走も半ば。
〆切まではあと二日なのに、原稿は真っ白だった。

気分転換に街へ出かけ、あてもなく歩く。
と、「歳末助け合い! 何でも買取致します」という看板が目に入った。
中に入り、店員に売り物をたずねると、紙のリストを渡された。
そこには人の名前、入荷の日付、それから「後悔」「眠気」「頭痛」「怒り」などの文字が書かれていた。

聞けば、ここは不要なものを預け、それを販売するそうだ。
それならと、私は「〆切」を預けることにした。
翌日、取引先から連絡があり、〆切は仕切り直しとなった。

一年が経ち、その店からメールが届いた。
「お預かりしていた『〆切』の委託期間が過ぎました。残念ながら売れませんでしたので、返却いたします」だという。

そのメールを読み終わるのと同時に、大量のメールが着信した。
どうやら、預けている間に状況が悪化したらしい。
──これを預けて売れるかどうか、私は頭を抱えた。
ファンタジー
公開:21/12/15 09:35

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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