喉スプレー

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今年もまた、喉の奥が支えてきた。痛いわけじゃない。そうじゃないけれど、喋れないんだ。
「お母さん、喉スプレーちょうだい」
今年もまた、頼んでしまう。そして、いい加減にしたら?と言われる。
(…ふん。お母さんには、わからないよ)
 けれど、正直私も、いい加減にするつもりだ。今年で最後…今年で最後…。
「好きです、先輩!付き合って下さい!」
やっと言えた。やっと効いた、喉の通りを、気持ちの通りを良くするスプレー。
「ありがとう。うれしいよ。でも……」
そう言って先輩は、卒業していった。玉砕だ。だが皮肉なことに、私は清々しい気持ちだった。いや、喉の奥が、清々しすぎた。清々しい喉を手に入れた私は、ものの数秒で次の恋へと走る、薄情な女になってしまった。
公開:21/12/14 13:03

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