舌が辛い

それは、突然のことだった。突然、何を食べても、辛い味になってしまった。
「辛い！ケーキもおまんじゅうも、水道から出る真水でさえも！」
これはどうしたことだろうと、男は三日三晩悩んだ。そうして悩んだ末に、とりあえず物を口にするのはやめようと決めた。そうなってくると、どんどん痩せてくる。もともと太すぎる体型だったので、ちょっとくらい食べなくてもよかった。むしろ健康を取り戻したほどだ。最初のうちは。そのうちにどんどん痩せていき、彼は寝たきりの状態になった。
ある日、自分がコメンテーターを務めていた番組を見ていると、代打の評論家の辛口コメントに吐き気を覚えた。が、ヒントも得た。そうだ！と彼は立ち上がり、テレビ局に向かう。そこで宣言する。
「私、評論家を辞めます！」
翌日、さまざまなものの味が戻ってきた。