英雄庁最後の日

6
3

この日がやってきた。
水戸光圀が創始し、長い歴史を持つ我々「英雄庁」が解体されるのだ。

ホールに集まった職員が、前に立つ長官の言葉に耳を傾けている。
隠れて悪事を働く者を裁き、公助も共助も得られない者を密やかに助けてきた、英雄庁の歴史が語られた。
怪盗ねずみ小僧、なんてのも職員だったらしい。

秘密裏に「公」が世に放った、有名無名の英雄たち。
それが所属するのが、英雄庁だ。

解体されるに至った理由はシンプルだった。
英雄は民間から出るべきだ、という政府の意向だ。それは納得できる。
ただ、英雄庁と並列することも可能ではないか。
さまざまな議論があったのだろう。一職員としては、決定に従うしかない。

長官の話が終わりに近づいてきた。
庁が解体されたあとの話だ。誰もが緊張の面持ちで、言葉を待つ。

すると──。
英雄庁は民営化すると発表された。
「株式会社英雄志願」として再出発するそうだ。
ファンタジー
公開:21/11/17 09:09

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容