元気レンジ

慌ただしい日々に、疲れが溜まっていく。
会社も気づいたようで、新サービスが導入された。
給湯室の隅に、人が立ってひとり入れるほどの大きさのカプセルが設置されたのだ。
その名を「元気レンジ」という。

中に入ると、ダイヤルがあった。
時間を選べと書いてあるので、十秒で試してみる。
ダイヤルをひねると、ぶぅんと低い音がした。
十秒後に「チン！」と鳴って、カプセルのドアが開いた。

身体の奥から気力が湧いてくるではないか。
電子レンジは水分子に働きかけて熱するが、元気レンジは身体にある「元気」を活性化させるという。

それならと、ダイヤルをめいっぱい回してみた。
サウナのように、身体から汗が噴き出してきた。

十五分を過ぎた頃。
ボン、と爆ぜるような音がして、私の身体はカプセルの中で崩れ落ちた。
全身から湯気が立ち上っている。動けない。

暖めすぎると爆ぜてしまうようだ。