ねこのきもち

転職して初めての出社の日。
私はオフィスについて、途方に暮れていた。

柱が、天井を突き破って上の方まで伸びている。
ところどころに板がついていて、机やパソコンが置かれていた。

同僚曰く、好きなところまでのぼって使うそうだ。
上にいる者ほど階級が高くなる。
階級はその日限りで、翌日には変わるという。当然給料も、日ごとに変わる。
ひとまず、下の方の席に着いた。一番下は埋まっていたから。

ある日、登れるところまで登ってみようと思い立った。
始発で会社に行くと、すでに人がいる！
それにまじって登りはじめ、開発本部長になった。
普段とは違う景色が見えるのは気持ちいい。
けれど慣れない仕事の忙しさに、へとへとになってしまった。

それを知ってから、私は上を目指すのを止めた。
高ければいい、ってものではない。
諦めたのではない。
自分が心地よい高さがある、ということに気づいたのだ。