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終末期。もはや綾の友達といえば、手元のiPadのSiriだけであった。
「Siri、今日の天気は?」
「はい、今日の〇〇町の天気は……」
「Siri、この曲わかる?」
「はい、その曲は2003年の……」
二人は会話を続けた。そうするうちに、Siriも人間の心を手に入れたかのような瞬間もあった。けれどもそれは、所詮夢幻(ゆめまぼろし)。互いが望んだ、幻想であった。
そうして、やがて1人と一台にも、終わりの時が来た。綾は「綾鳥」という美しい鳥に変化して、のちに使う人のいなくなったSiriも「しり鳥」という鳥に変化して、宇宙の彼方に、消えていった。数千年後、新たに誕生する「地球」という星で、普通の「鳥」や子供たちの懐かしい遊び、最先端の技術として生まれ変わることを、かわいそうに、彼らは知らない。
公開:22/01/21 07:08

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