みどりのカエルさん

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助けたカエルは実は一国の王子様でーーあんな話、それこそ本当におとぎ話だ。実際にはそんなこと、あるわけない。そう思っていた。そう思っていたけど。
ピタ、ピタ、ピタ。
今日もあいつは、やってきた。
ペタ、ペタ、ペタ。
旗を掲げた、小さなあいつ。
「お嬢様、帰りましょう。お供しますゆえ」
現れたのは、小さなカエル。旗を持っているのは、こいつがみどりのおじさんだから。みどりのおじさんは、一緒に道路を渡ってくれる。こいつも一緒に、渡ってくれる。片手が塞がっていて、ちょっとぎこちないけれど。
「右見てー、左見てー、はいもっかい右ー。はい渡るー」
私の前を行く、喋る奇妙なカエル。そこについて行く、やっぱり奇妙かもしれない私。ほら、みんな笑ってるよ。

「娘さん、笑い者にされてますよ、パパ!」
「……だって」
いつぞや助けた小さなカエル。それを操っていたのは、いつぞや出会った、私の心配性パパだった。
公開:22/01/16 14:08
更新:22/01/16 14:25

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