ユニコーンの遺言

ツノが、揺れている。
それに気付いた時、ユニコーンは自らの死期を悟った。
自分は、この世界、最後のユニコーンだ。先に逝った仲間のため、せめて自分だけでも、夢を叶えたい。
一族皆の夢。それを叶えるために、ユニコーンは遺言を残した。昔知り合った、小さな、小さな妖精に。彼女は言ったから。自分は、永遠の命を持っているのよ、って。
「妖精！いるか、妖精！」
「はいはい、なあに？」
「私は、一族は、じきに歴史を終える。ふつうの馬になる。ーー私の夢を、叶えてくれるか？」
「あんまり力が必要なのは無理よ」
そんなことを言うから、つかの間考えてしまったけれどーー

「ママー！ピースピース！」
「パパー！ちゃんと撮ってよ！」
命あるユニコーンとしての生を終えた私は今、遊園地のいたる所で、人間の幸せな声を聞いているーー。