レーサーの消しゴム

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いつでも、誰にでも、世代交代の時は訪れる。
世界的地位と名声をものにした彼も、例外ではなかった。しかしプライドの高い彼がそれを許すはずもなかった。そして彼はいよいよ精神をも壊す。
「どうしたらいい?」
ある時彼は知り合った麻薬売りに相談した。
「わかってはいるんだ。時代はもう、俺を求めてはいないって。わかってはいるんだが……!」
「それを認めたくない、と」
うなずく彼。そんな彼に麻薬売りはある物を売った。それは薬ではない。
「消しゴム?」
「ああ。それはな、記憶を消す消しゴムだ。その消しゴムで、負けた試合の記憶と記録を消せ。そうすればーー」
「未来永劫、俺は英雄でいられる!」
 彼は早速それを使った。そしてーー

「誰だ?あのオッサン」
「弱そうだな。あいつに賭けるのはやめよう」
消しゴムを動かし続けた彼は、過去の記憶と記録をも、消してしまったらしかった。彼を知る者は、もはや誰もいない。
その他
公開:22/01/11 10:52

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