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交差点を見下ろすビルの屋上を、冷たい風が吹き抜けていく。
足元の電気ストーブが、とてもありがたい。

ここが、今日の私の仕事場だった。
まず人の集まりを探す。
見つけたら、そこに視線を合わせて五秒間凝視するのだ。
その後、意識を集中して目を閉じて──「改行」!
この場合、十人の集団が、五人ずつの二つに分けられる。

私が改行の力に気づいたのは、大人になってからだ。
以来、ある日は渋滞の高速道路。
別の日は花火大会の会場。
一番最初は、牧場での羊の整理の仕事に呼ばれたのだった。

ここ数年は引く手あまただ。
なにしろ、強制的に混雑を解消できるのだから。

あくびをかみ殺しながら「改行」を続けていると、いつの間にか居眠りしてしまっていた。
──はっ、と目を開けた。

目の前には、何もない真っ白な景色が広がっていた。
いけない、またやってしまった。
「改行のしすぎ」だ。
ファンタジー
公開:22/01/12 09:48

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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