罪と罰の夜

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満月の夜、人気のない雑木林。
わたしは、大型のシャベルで土を掘っていた。静粛の中、ザクっという、奇妙に心地よい音だけが響く。掘り起こした土の山の横には、ブルーシートに包まれた妻の遺体が横たえられている。
「こらっ、何をしているっ」
懐中電灯の灯りが揺れ、警官が二人、こちらに向かって走ってくる。わたしの事前の通報を、真に受けてくれたようだ。
妻を殺した罪で罰を受ける。それは、わたしの浮気を嘆いて自殺した妻への、自分なりの償いだった。
ミステリー・推理
公開:21/09/08 08:09
更新:22/08/08 21:40

紫丹積生( 千葉県 )

 冷たい夜、漆黒の空に浮かぶ細い三日月を見上げながら、そっと考えてみる。
 語れば語るほど、伝えたいはずの思いが遠ざかっていくのは、なぜだろうか。
 うわべだけの安直な言葉や表現は、輝き始めた世界を色のない平板な景色に一変させ、萌芽しかけた感動を薄っぺらで陳腐な絵姿に貶めてしまう。
 想いは、伝えるのではなく、感じさせるもの。ありふれたシンプルな言葉で、暗く、苦く、美しい物語を紡いでいきたい。

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