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よく晴れた春の日の午後のこと。カフェのオープンテラスで、ランチを食べ終えたぼくの前を、自転車が軽やかに走り抜けていった。自転車に乗っていたのは、淡いピンク色のブラウスを着た二十歳くらいの女性。
この席に座ってから一時間、この麗しい自転車乗りがぼくの前を通り過ぎるのは三回目だった。一回目はスカイブルーのトレーナー、二回目はレモンイエローのワンピースという格好だった。
彼女は、何のために、同じ道を、違う衣装で通り過ぎていくのだろう。
ぼくは店を出ると、彼女が走り去っていった方に向かった。歩いて、五分。開店の花を飾ったケーキ店の中に、淡いピンク色を見つけた。店内には、彼女のほかに数人の客。
「とっても、おいしい」試食品らしいケーキをつまみながら、彼女が大きな声をあげている。「こんな、美味しいケーキ、食べたことがない」
なるほど。店の前のサクラから、ピンク色の花びらがはらはらと舞い落ちた。
この席に座ってから一時間、この麗しい自転車乗りがぼくの前を通り過ぎるのは三回目だった。一回目はスカイブルーのトレーナー、二回目はレモンイエローのワンピースという格好だった。
彼女は、何のために、同じ道を、違う衣装で通り過ぎていくのだろう。
ぼくは店を出ると、彼女が走り去っていった方に向かった。歩いて、五分。開店の花を飾ったケーキ店の中に、淡いピンク色を見つけた。店内には、彼女のほかに数人の客。
「とっても、おいしい」試食品らしいケーキをつまみながら、彼女が大きな声をあげている。「こんな、美味しいケーキ、食べたことがない」
なるほど。店の前のサクラから、ピンク色の花びらがはらはらと舞い落ちた。
ミステリー・推理
公開:21/09/07 12:59
更新:22/08/08 21:39
更新:22/08/08 21:39
冷たい夜、漆黒の空に浮かぶ細い三日月を見上げながら、そっと考えてみる。
語れば語るほど、伝えたいはずの思いが遠ざかっていくのは、なぜだろうか。
うわべだけの安直な言葉や表現は、輝き始めた世界を色のない平板な景色に一変させ、萌芽しかけた感動を薄っぺらで陳腐な絵姿に貶めてしまう。
想いは、伝えるのではなく、感じさせるもの。ありふれたシンプルな言葉で、暗く、苦く、美しい物語を紡いでいきたい。
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