弟を探して

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無口な船頭に連れられてやって来たのは、渓谷沿いの洞窟だった。 
「俺の案内はここまでだ。あとは1人で行け」 
俺は戸惑った。そんな俺に、彼は断固言う。1人で行け、と。
「安心しろ。中には水が貯まっているが、膝下までしか浸からんし足はつく。なにも危なくはない。ーー奥にいるお前の弟以外には」 
「え……?」 
せっつかれるように舟を降りた俺は、振り返った。「ご武運を」頭を下げる船頭ーー。

十八の誕生日の日、母さんから聞かされた事実と「ある噂」。タワン渓谷の奥、洞窟の奥に棲むという青い竜の噂。それが俺の弟であるという、母だけが知る事実。 
ー弟は産まれて間もなく、竜になった。竜に丸飲みされたのだー
「数えで十八になる今日、お前が、俺だけが、弟を救えるーー」 
 足を一歩、踏み出す。 
 すべてはまだ見ぬ弟を救うためにーー。
ファンタジー
公開:21/08/29 10:00
更新:21/08/29 09:54

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